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発酵・長寿県長野の麹(こうじ)が拓く、食の新たな可能性

記事投稿日:2024.02.29

日本一の味噌生産量や全国2位の酒蔵数を誇る長野県。この醸造になくてはならないのが「麹・糀(こうじ)」です。今回はユニークな商品開発を展開する老舗麹専門店による取組をご紹介。発酵食を日常に取り入れるヒントを探ります。

「発酵・長寿県」長野について

~発酵をキーワードに、さらなる健康長寿をめざす~

全国トップレベルの長寿県である長野県では、野菜をたくさん食べ、日本一の生産量を誇る味噌をはじめ醤油や日本酒、漬物など、様々な発酵食品を含む多彩な食品を取り入れた食生活を積み重ねてきました。これからも発酵食品産業の振興と、さらなる健康長寿を目指していきます。

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簡単、おいしい、健康的。こうじのある暮らしをもっと身近に
~有限会社西麹屋本舗 こうじ専門店「24koujiya(にしこうじや)」(長野市)~

「西麹屋本舗」6代目 西澤 義弘さん(右) 真澄さん(左) 夫妻

日本一の味噌の生産量を誇り、全国2位の酒蔵数を誇る発酵王国の長野県。そんな味噌や日本酒のほか、醤油やみりん、酒、酢など、発酵調味料の醸造になくてはならないのが「麹・糀(こうじ)」です。

こうじとは、温暖で多湿な日本の気候風土の中で育まれたこうじ菌を、蒸した米や麦、豆などの穀物に付着させて繁殖させたもの。こうじ菌は多くの酵素を生成し、そのはたらきで素材をやわらかくしたり、発酵食品の旨味や甘味を引き出したりすることから、古来、日本の食文化に大きな影響を与えてきました。2006年には、日本人が大切に育んできた貴重な財産として、日本の国菌に認定されています。

こうじの中でも、稲作が盛んな日本で最もポピュラーで使い勝手もよいのが米こうじ。米由来の自然な甘味やまろやかさがあり、発酵によって食材本来の旨味や風味、コクを引き出すほか、保存性や栄養価を高める力を持ちます。
そうした「こうじをもっと身近に感じてもらいたい」と、2020年にこうじ専門店「24koujiya」をオープンしたのが、「西麹屋本舗」6代目、西澤義弘さん・真澄さん夫妻です。

肉や魚に塗るだけでワンランク上の味わいになる塩こうじ、醤油こうじのほか、自家製味噌、醤油豆、ギフトセットなど、多彩な商品が並ぶ。こうじの量り売りも

人気の「バジル」や「とまと」、季節限定品など風味をアレンジした塩こうじ。見た目も鮮やかで使いやすく、子育て世代から年配の人まで幅広い客層に愛されている

「こうじは日持ちの程度がわからず、使い方が難しいとよく言われますが、醤油こうじは刺身に付けたり、卵かけご飯や目玉焼きに乗せたりと、醤油代わりに簡単に使えます。塩こうじは肉や魚に塗って焼くだけで素材のおいしさが引き立ちますし、トマトソースやミートソースに少し足すだけで味の深みが増します。醤油や塩の代わりの調味料として使うことができ、料理がおいしくなるうえに、健康にもよいという魅力を知ってもらえたら」

こう話すのは「24koujiya」のアレンジ商品の生みの親、真澄さんです。その言葉通り、西澤家では毎食、塩こうじの野菜の浅漬けや、砂糖代わりに甘酒を加えたヨーグルトなど、こうじを取り入れた料理が並び、祖父母から小学生まで三世代が楽しく食卓を囲んでいるそう。

とはいえ、先祖代々、米こうじ造りに励んできたDNAが刻まれた義弘さんと異なり、2011年に結婚するまで、こうじとはほぼ無縁だった真澄さん。当初はこうじの使い道も知らなかったそうですが、塩こうじや甘酒の一大ブームが起きた忙しさの中でも、常連客から使い方を聞き、子どもが小さな頃は育児をしながら発酵に関するあらゆる書籍を読み進めるうちに、次第に発酵の奥深さに魅了されていったと言います。

こうしてどんな料理にもこうじを加えることが当たり前になって生まれたのが、数々の塩こうじのアレンジ商品です。
2019年には、市内の手作り市で販売するように。すぐに話題になり、翌年、工場近くの土地が空いたのを契機に一念発起し、ショップを立ち上げました。

「こうじは保存環境で味わいが異なるのも特徴です。店頭なら保存方法もすぐに伝えられますし、自分で発酵の進み具合の感覚を養ってもらえたら。この店が、こうじの楽しさを知ってもらうコミュニティの場になればいいですね」(真澄さん)

発酵の力で料理のおいしさも栄養も高めてくれるこうじ。気構えず、楽しく気軽に日々の生活に取り入れ、心も体も喜ぶ豊かな暮らしを始めてみませんか。

「いずれは店を構えたい」と夢に描いていたが、近隣に土地が空いたタイミングで現実に。「ここで動かないと一生後悔する」との決意のもと、2020年にこうじ専門店「24koujiya」をオープン

店内には真澄さんがこれまでに考案したレシピ集が。また、料理家などによるオリジナルレシピも「24koujiya」のウェブサイトにて多数公開している

こうじ専門店「24koujiya(にしこうじや)」

住  所:長野県長野市柳原1893-6

電話番号:026-217-1929

H    P:https://www.nishikoujiya.com

 

甘酒×焼き芋の新感覚スイーツでこうじの魅力を発信!
~有限会社若宮糀屋(岡谷市)~

「若宮糀屋」4代目 代表取締役社長 花岡 拡和さん(左) 女将 花岡 慶子さん(右)

県下有数の味噌の生産地、岡谷市。明治から昭和初期にかけては蚕糸業のメッカとしても知られ、多くの製糸工場では工女が住み込みで働き、食事に使う味噌は工場ごとに仕込まれていました。そのため、元は工場の宿舎だったという蔵が多いのが特徴です。

明治19(1886)年創業の「若宮糀屋」も、かつては養蚕と、味噌の原料であるこうじの両方を生業としていたとか。製糸業の衰退後もこうじ造りを続け、今では諏訪圏域に残る唯一のこうじ専門店になりました。

こだわりは、味噌用、甘酒用、販売用でこうじを造り分けていること。ポイントは温度管理だそうで、生こうじで粒が柔らかいのが特徴です。また、販売用のこうじは木製の平たい室蓋(むろぶた)を使う昔ながらの製法を変わらず続けています。

こうして造るさまざまな米こうじなかでも、特に「若宮糀屋」ならではの誕生秘話があるのが、甘酒用です。

これは、かつて先代がこうじの時間管理を失敗し、発酵の過程で米が溶けてベタベタにしてしまった米こうじをベースに、当時、修業中の身であった拡和さんが「なんとか生かしたい」との思いで開発したのだそう。甘酒が一番甘くコクが出るこうじを研究した結果、米のコクと旨味が際立つこうじが生まれました。

そして、その甘酒を使い、2020年に生まれた大ヒット商品が「甘酒焼き芋」です。低温でじっくりと焼いた芋に、糖度35度以上の濃厚な甘酒をたっぷりと塗り、再び焼いたら出来上がり。

素材の旨みに、ほのかな甘酒の風味が香り、香ばしい焦げ目との相性も抜群です。サツマイモは“シルクの街”岡谷が普及に力を入れているシルクスイートを使用。シルクのようになめらかな舌ざわりと上品な甘さが特徴のサツマイモです。

販売用のこうじは木製の室蓋(むろぶた)を使う昔ながらの製法。蒸した米に種こうじをつけ、室蓋に移してから3日かけてこうじを育てている。

「甘酒焼き芋」は糖度35度の濃厚な甘酒を使うため焦げやすい分「香ばしさや旨味が乗った皮こそおいしい」と慶子さん。通販も対応しており2本パックを冷凍で発送

この人気商品が生まれた背景にあるのは、地元愛です。

「コロナ禍でさまざまなイベントもなくなり、外出も楽しめないような状況でした。そこで、店に足を運んで買い物に来てくれるお客様に喜んでもらえるような、こうじ屋ならではの独自性のあるものを作って地域を元気づけたい、自分たちの仕事を通して社会に何かアクションを起こしたいと思っていました」

こう話すのは、女将の慶子さんです。開発のヒントになったのが、常連客から聞いた「焼き芋を甘酒に漬けて焼くとおいしい」という話でした。

「うちの甘酒は、ノンアルコール、ノンシュガーなので、赤ちゃんからお年寄りまで飲むことができます。その甘酒を使い、岡谷が普及を図るシルクスイートを使ってみたいという思いから開発が始まりました」

ただ、商品化までは試行錯誤の連続だったそう。当初は甘酒に漬け込んでから焼いていましたが、硬くなってしまうのが難点でした。そこで、半年ほど改良を重ね、サツマイモを焼いた後に塗り込んで再び焼く現在の製法に。甘酒は糖度が高いため焦げやすい分、その香ばしさや旨みが乗った皮こそおいしいのだと慶子さんは言います。

また、開発過程ではスタッフ全員が関わり、楽しみながら新商品を生み出せたことも意義深かったと慶子さんは振り返ります。

「自分も含めて、外出も行事も楽しめない状況が続く中、誰もがつらい思いをしているなら、みんなで仕事を通して楽しいことをしたいと思っていました。焼き芋好きなスタッフもいることから、サツマイモの選定から、製法の違い、甘酒を塗ってから焼くまでの時間など、みんなでいろいろな角度からテストし、試食を繰り返しました。日々の製造業務だけでなく、スタッフと一緒に新たな企画の立ち上げや商品開発をしたいとの思いが叶いました」

そんな慶子さんが、次に見据えている新たな取組が、宿泊型の味噌・こうじ造りの体験サービスです。2022年にはモニターツアーを開催し、8割以上の参加者から高評価を得たのだとか。

「以前から、こうじの製造現場には高い価値があると思っていました。独特の香りや感触も音も、ここで生まれ育った人たちには普通のことですが、嫁いできた私にとっては、芸術的にも文化的にも伝統としても素晴らしいと感じていたんです。このクオリティの高さを多くの人に知ってもらう機会があったら、と思っていた中で、考えついたのが体験ツアーです」

ツアーのテーマは「体感を取り戻す」。老舗店のこうじの可能性の追求は、まだまだ続いていきます。

店前に自動販売機も設置したことで、いつでも甘酒焼き芋や生こうじ、甘酒、味噌が購入可能に。

各種商品は店頭販売も。 (各パッケージはリニューアル前のものを含む)

有限会社 若宮糀屋のページをチェック!

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発酵バレーNAGANOのご紹介~

発酵バレーNAGANOについて

~長野県が誇る発酵食を世界に発信するプロジェクト~

本コンソーシアムは、長野県発酵食品産業加盟8団体・企業(みそ・日本酒・ワイン・醤油・漬物・納豆・チーズ・酢)が連携して「長野県が誇る発酵食(健康食)」の魅力を、広く県民に、さらに海外から長野県に来られる方に発信し「NAGANOと言えば、発酵・長寿県というブランドを構築すること」を目的としています。

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いかがでしたか?山に囲まれ、海が無く、冬は雪に閉ざされるため、古くから発酵食品が産業として発展してきた長野県には、たくさんの「発酵」を活かした商品がそろっています。ぜひ、サイトでチェックしてみてください!

 

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