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チーズから感じる信州のかおり 長野県のうまいチーズのご紹介

険しくも美しいアルプスの山々や、暮らしに寄り添う里山で作られるチーズたち。作り手たちは、信州の多様な自然環境を、“その地らしさ”の味に変え、生かしこだわりのチーズを生み出しており、国内外のコンテストで受賞するほど。今まさに「MADE IN NAGANO」の高品質なチーズが注目を浴びています。

チーズの平均支出金額の推移について

総務省統計局が行う家計調査によると、二人以上の世帯がチーズに対し支出する年間平均金額は増加傾向にあります。

(出典:総務省統計局 家計調査)

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地域と織りなすチーズ作り~BOSQUESO CHEESE LAB.(ボスケソ・チーズラボ)(佐久市)~

代表取締役 是本健介さん

蓼科山の北麓、かつて中山道の宿場町「望月宿」として栄えた佐久市望月。山村らしい風景が広がる春日地区に工房を構えるBOSQUESO CHEESE LAB.(ボスケソ・チーズラボ)の店頭にはMIMAKI、FUSE、MOCHIZUKIなど、近隣地区などの地名を冠したユニークなチーズが並びます。

オーナーの是本健介さんの前職は自動車会社のエンジニア。仕事で世界中を飛び回る中、各地で出合ったチーズの奥深さに魅了されたといいます。「ワインはもとより日本酒とのペアリングも楽しめ、パスタ、米、肉、魚、野菜となんでもあうチーズって本当に懐が深い食べ物だなと感じています。これほど多様なものとの相性がよい食材も珍しいのではないでしょうか」と是本さん。

持ち前の探究心から、休暇を利用し、北海道のチーズ工房でチーズ作りの基礎を学び、宇都宮市の自宅のキッチンで試作を繰り返す中で技術を磨いていきました。土日には奥様の実家のある佐久市浅科を訪れ、農作業を手伝うことが多かったという是本さん。ある日、知人からの紹介で参加した佐久地域のシェフや生産者らが食を通じて地域を盛り上げる活動を行う「39bar」との出会いが大きな転機となります。

「39bar」の仲間に試作したチーズを食べてもらって、感想を聞き、改善することの繰り返しで、技術と品質の向上に拍車をかけるとともに、地域の人たちと繋がる中で、自身もチーズ作りを通してこの地を盛り上げたいとの思いを抱くようになりました。

一念発起し、宇都宮市から長野県に移住してきた是本さん。1年間をかけて工房を建てる準備をし、2016年のクリスマスにボスケソ・チーズラボをオープンしました。

BOSQUESO CHEESE LAB. 店舗には近隣地区の名を冠したユニークなチーズが並びます。

春日温泉の源水で磨くウォッシュチーズ「KASUGA」。

是本さんのチーズは、本場ヨーロッパでの作り方をベースに“長野らしさ”を意識していることも特徴で、日々“何かチーズに活かせる素材はないか?”探しているのだといいます。その一例が工房から徒歩圏内にある春日温泉の源泉水を利用したウォッシュタイプの「KASUGA(カスガ)」やラクレットタイプのセミハードチーズ「JIRI(ジリ)」です。アルカリ性が強い春日温泉の源泉でチーズを洗うことで、表皮に含まれるリネンス菌(納豆菌の仲間)が活性化するそうです。

同じく近隣の布施温泉が強い塩泉と知ると、モッツァレラチーズの保存液に活用。チーズに地元らしさを出すことを実践してきました。相談を受けて商品を開発することもあるそうで、「39bar」の仲間である佐久穂町の老舗酒蔵、黒澤酒造さんからコラボを持ち掛けられ誕生したのが、蔵付の乳酸菌を用いて発酵させた酵母熟成ソフトチーズ「MIMAKI Kimoto」です。このようにチーズ作りに生かせる資源を探し続け、形にしてきたこともあり、ボスケソ・チーズラボでは現在20種ものチーズを製造しています。

新たなチーズの製造にあたっては、最初に仮説を立て、目指す味を決め(設計)、仮説に基づいて製造(試作)し、できたチーズを自分の舌で確かめる(試作品のデータ計測)という、設計・試作・計測を繰り返しながら形作っていくという是本さん。「エンジニアの仕事と現在携わるチーズ作り、設計・試作・計測などの基本的な考え方は80%同じだと思っています。しかし、車の場合は年間を通して、常に一定の品質の部品が届くけど、チーズの場合、材料のミルクは自然のものなので四季はもちろん、日々微妙に成分や味、風味が変化します。また、車は完成した後は、時間とともに少しずつ劣化していくのに対し、チーズは“熟成”によってよりよくしていくことができるなど、この20%の違いがチーズ作りの難しくも面白いところだと感じています」と話します。

長野県に移住し、奥様と一緒にまちづくりのイベントなどに参加する中で、里山保全や環境問題にも興味を抱くようになったという是本さん。馬で木を切り出し、牛や豚を放牧することで荒地を整え、動物の乳を絞り、チーズをつくるとともに、チーズの副産物 ホエイを動物に飲ませて育て、肉や堆肥を得るような活動ができないかと考えているそうです。
他にも、フランス ブルゴーニュの高級ワイナリーなどでも行われている、環境にも優しい「馬耕」にも興味があるという是本さん。「動物の力を借りながら地域や自然を循環させることで、毎年深刻になっていく里山の荒廃を食い止めたいですし、動物と地域の人とが触れ合うことのできる機会も提供できれば」と今後の展望を語ります。

「このあたりにはどんどん若い人も移住してきている。新しい文化、交流が生まれてこれからもっと良い土地になっていくと思っている。その中で私はチーズを通して“食文化”の部分で盛り上げていければ」と是本さん。チーズ作りを通じて出会った地域の仲間達と共に地域を盛り上げ、次世代に繋がる環境づくりを目指しています。

熟成前のチーズ。ミルクは東御市の小林牧場から仕入れています。

チーズに地元らしさを出し続ける是本さん。近所の猫をモチーフにしたチーズも。

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100の挑戦が生み出したチーズ~アトリエ・ド・フロマージュ(東御市)~

チーズ工房責任者 塩川和史さん

長野県東部に位置し、浅間連山や八ヶ岳連峰などの山々に囲まれた東御市。市の真ん中を千曲川が流れ、川をはさんだ傾斜地にはワインブドウの畑が広がります。千曲川の右岸、浅間山からの傾斜地に工房を構えるアトリエ・ド・フロマージュ。クリーミーでさわやかな酸味のフレッシュチーズ「生チーズ(フロマージュ・フレ)」の製造を日本で初めて手掛け、以来フレッシュからウォッシュ、ハードタイプとチーズ作りの幅を広げてきました。

アトリエ・ド・フロマージュは昭和57年(1982年)、松岡茂夫(故人)と容子(現会長)夫妻が旧東部町(現東御市)にて創業。出版業界で働いていた2人は、本場フランス産のカマンベールチーズを食べた際、その深い味わいに感動を覚え、「自分たちもカマンベールチーズを作ってみたい」との思いを抱くように。チーズ作りをフランスで学んだ後、容子さんの実家が東部町(現東御市)で牧場を営んでいたこともあり、この地にチーズ工房を構えました。

「容子さんは『100チャレンジして1つ成功すれば良いんだよ』と常々言っていて、私としてはせめて1/10くらいじゃないと会社として困るよと思っていたんですが、何もないところからのスタートだったので、きっとご本人たちもたくさんの挑戦をされてきたのでしょうね。」
と話すのは、チーズ工房の責任者を務める塩川和史さんです。創業者夫妻の「チーズをもとに豊かな食卓を」という思いを引き継ぎながら、日本のチーズを世界レベルに引き上げたいという思いで日々チーズ作りに励んでいます。

高校時代に同社でアルバイトをしたことが縁で2007年に入社した塩川さん。入社前に同社のチーズを食べたとき、「もっとおいしくなるはず。自分の手で変えたい」との思いを抱いたという塩川さんが特に力を入れているのがブルーチーズです。

「チーズ作りを始めたころから世界3大ブルーチーズ(ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン)のようなものを作りたいとの思いで日々励んできました。同業者の中には『日本ではできるわけない』と言う人もいましたが、少しずつでも近づけていけばいつか同じステージに立てるはずだと信じてきた」と塩川さん。

世界レベルのブルーチーズ作りを目指し続けてきた背景にはこんなエピソードが。目指す3大ブルーチーズと味も食感も大きな差を感じていた塩川さんは一度だけ、「自分の思い描くやり方でブルーチーズを作ってみたい」と茂夫さんに提言したことがあったそうです。衝突もありましたが、茂夫さんと話を重ねる中で「職人としてより良いものを目指すのは当然の思い。だから挑戦すればいいんだよ」とチャレンジさせてもらえたのだと言います。「それが今に繋がっている。現在のチーズは創業者から先輩や自分が引き継ぎながら、失敗の積み重ねの中から改良を重ね生まれたものだと思っている」と塩川さんは自信をのぞかせます。

生チーズ(フロマージュ・フレ)」。クリーミーな食感で、フランスでは子供の離乳食やヘルシーなおやつとしても人気があるとのこと。

工房の棚に並ぶ熟成中のチーズの様子。

原材料であるミルクの品質や職人の技に加え、チーズを熟成させる地域の気候や風土も味わいに大きな影響を与えるそう。
「空気中にはさまざまな乳酸菌が漂っていて、それは環境によって異なります。例えば、この工房の中で作ったチーズを、比較的乾燥している東御市の工房で熟成させるのと、湿度が高い軽井沢町にある工房で熟成させるのとでは、まったく違う味わいのチーズが出来上がります。付近に高原植物も生息していることもあり、ここの工房のチーズは花のような香りが感じられるのに対し、軽井沢のものは漬物の古漬けのような風味になるんですよ。」と教えてくれた塩川さん。

「日本のチーズ作りの先駆者的存在、松岡夫妻が目指したことを引き継ぎつつ、自分のエッセンスを入れ、長野県は良いチーズができるということを発信したい。フランスの技術でフランスと同じレベルのものを作るのではなく、長野でしか作れないもので世界と勝負をしたい」と長野らしさにかける思いを熱く語ります。

積み重ねてきた努力が実を結び、2015年にはフランスのチーズコンテスト「モンディアル・デュ・フロマージュ」に出品したブルーチーズが、最高賞にあたるスーパーゴールドを受賞。さらに2021年11月には「World Cheese Awards2021」に出品した同社のブルーチーズの“翡翠”が、世界45カ国4079品の出品総数のうち、国内で唯一最高品質の16品に選ばれました。「外皮が珍しく、牛乳製のわりにはくちどけが軽い」ところが評価されたとのこと。塩川さんによると世界の多くのブルーチーズの外皮は乾燥により固くなっていたり、チーズを包むアルミや錫が外皮に食い込んでしまっている事があり、皮を取って食べることが多いのに対し、アトリエ・ド・フロマージュの“翡翠”は製造段階で独自の工夫が施されているため、アルミや錫も付かず、皮も固くならずそのまま食べられるのだそうです。

最も力を入れて作ってきたブルーチーズでの受賞に「2度の受賞で、ようやく自分がやってきたことが正しかった、常に高品質なチーズを製造していると証明できたことが一番うれしく思います」と塩川さん。
「今あるものをよりよくすることで、日本一といわれるものを作りたい。長野県のチーズのレベルが上がったと言われたい」と、さらなる目標を掲げます。

創業から約40年。「生チーズ」から始まったアトリエ・ド・フロマージュのチーズ作りは、世界トップレベルにまで上り詰めました。創業者夫妻の1つの挑戦から確かな技術へと繋がってきたことは、数々の失敗を積み重ねてきた上にあります。「自分に才能があるとは思っていないし、完成したとも思っていない。小さな積み重ねでここまできたと思っている。さらに新しい挑戦を重ね、創業者から自分、そして次の世代へ繋げていけたら」と塩川さん。今後は長野県やこの地域にしかない乳酸菌を研究したり、最近どんどん増え進化している地元東御市のワイナリーなどとも協力しあい、ここでしか作れない地域性のあるチーズを作っていきたいとの思いを抱いているそう。100の挑戦からまた1つ、世界への扉を開けるものが生まれるに違いありません。

「World Cheese Awards2021」で国内唯一、最高品質の16品に選ばれた“翡翠”

同社ではチーズを使用したさまざまな商品やワイナリーとのコラボイベントなどを実施。写真は2021年7月に開催された東御市のワインとアトリエ・ド・フロマージュのチーズのペアリングイベントの様子。

株式会社アトリエ・ド・フロマージュ

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夢の実現のために選んだ地、南木曽町でヤギとともに~マウカラニ ゴートファーム(南木曽町)~

オーナー 三輪亜希子さん

木曽路妻籠宿などで知られる南木曽町。その山間の集落でヤギの飼育とチーズの製造販売を行うのが「マウカラニ ゴートファーム」オーナーの三輪亜希子さんです。

三輪さんは教育現場での仕事を退職後、動物好きであったことが高じ、畜産を学ぶためにハワイ大学へと留学。アニマルサイエンス学科で多様な動物について学ぶ中で、子ヤギの人懐っこく見ているだけで人を笑顔にしたりする様や、ミルクが取れたり、毛織物やチーズが作れたりと、さまざまな可能性を秘めているヤギに興味を抱くようになりました。

同時期にヤギのチーズのおいしさの虜になった三輪さん。卒業後はハワイ島の牧場でインターンとして働き、ヤギの世話をしながらチーズ作りを見学する生活を送る中で、「いつか牧場でヤギを飼い、自分でチーズを作ってみたい」との思いが募るように。しかし、お金も土地もないことから、日本に帰国してからはその思いを心の片隅にしまい込んだといいます。

帰国後は故郷の愛知県の大学で勤務していた三輪さんにある日、転機が訪れます。業務の一環として受講したコーチング講座の中で将来の夢について発表し会う機会があった時、諦めかけていたヤギ牧場やチーズ作りへの思いを話したところ、ぜひ挑戦してほしいという多くの温かい励ましを受けたのです。その後しばらくし、遊休農地を借りて畑を耕す活動をする友達と南木曽町を訪れた際「南木曽町なら地域おこし協力隊という制度を活用して、三輪さんが抱く夢の実現にむけて挑戦できるよ」という地元の方からの前向きな後押しも重なり、夢を実現するため南木曽町への移住を決意しました。

山を切り開き牧場に。現在は豊かな自然の中で約40頭のヤギが元気に暮らしています。

マウカラニ ゴートファーム(MAUKA LANI GORT FARM)のMAUKAはハワイ語で「山側の」、LANIは「天国、広い空」を意味します。

常夏のハワイと冬の寒さ厳しい南木曽町では正反対のように思えますが、「森に囲まれ、視界に人工物が何一つ見えない様子がハワイ島の景色に似ており、この地に立った時に自分がここで牧場を経営するイメージがあふれてきたんです」と三輪さん。南木曽町は故郷の愛知県からも近く、外国人も多く訪れる観光地であったことも移住の決め手となりました。

南木曽町の地域おこし協力隊としての活動を始めると同時に、街中に借りた家の裏庭で3頭のヤギの飼育を開始。ヤギが出産し、ミルクがとれるようになった2年目、家の台所での試作から始まった三輪さんのチーズ作り。インターン時代に見たチーズ作りやハワイの牧場でお世話になった恩師からの教えも受けながら、技術を磨く日々を送りました。

両親や地主さんの協力もあり、2019年には牧場を開業し、念願のチーズまでこぎつけました。「チーズ作りは試行錯誤の連続で、ようやく最近になって人においしいと言ってもらえ、自信を持って出せるチーズが作れるようになったんです」と話します。

「もう一度人生の分岐点があったら同じ道は選ばない。大変だから」と冗談交じりに言う三輪さんですが、「“田舎ものはおせっかいなんだよ”と言いながら、サポートしてくれる町の人たちが本当にあたたかいんですよ。大変さより人からもらう喜びのほうが大きいから頑張れるんです」と続けます。

「牧場の豊かな自然とヤギのいる景色に町の人がリラックスできたり、このチーズをきっかけに南木曽町を訪れる人が増えたら嬉しい」と三輪さん。
南木曽町に新たな風をおこすべく、三輪さんの奮闘は続きます。

搾乳の様子。オーナーの三輪さんは、今後はセミハードタイプのチーズにも積極的に取り組んでいきたいと話します。

ヤギチーズ独特の臭みが出ないよう、朝と夕方の2回搾乳したミルクを新鮮なうちに仕込んでいるそう。

MAUKA LANI GOAT FARMのページをチェック!

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いかがでしたか?気候や風土の影響を受ける一つ一つ大切に生産された極上のチーズたち。長野県でしか生み出すことができない小さな宝物からは、長野県の自然を思わせるような香りが楽しめることでしょう。ぜひ、サイトでチェックしてみてください!

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チーズとの相性抜群!
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